きっかけという名の

 

 

しがない大河ファンだった私は、錦戸亮さんの演技とルックスに惹かれて、「アイドル・錦戸亮」に興味を持つようになった。

 

 

最初に見た動画は、クロニクルのいきなりドッジ、だったと思う。

外から届いた重箱の中身を、亮ちゃんが過剰に怖がるという、あれ。

 

端的に言うと、私は混乱した。

 

あれっ?錦戸亮さんってこんな人だったっけ?

 

おぼろげにたゆたう、かつてバラエティ番組で見た彼の姿を必死にかき集めた。

 

しかしながら、「錦戸亮はビビり」なんて情報はどこにもありはしなかった。

少なくとも、私の記憶の中には。

 

しかしどうだ。現実は。

 

デリバリーの要領で届けられた重箱。

中身を確認してにんまりと笑うすばるくん。

「亮!」と真っ先に名前を呼ばれた錦戸さん。

 

(この時点で、彼がメンバーから重度のビビりと認定されていることが伺えた。)

 

重箱は丸山さんにバトンタッチされ、当の錦戸さんは、

「嫌や!!俺嫌や!!」

と、駄々を捏ねる。

容赦なく重箱を突き付ける丸山さん。

そして謎の「ネコ?」発言。

 

 

意味がわからない。

意味が分からなすぎて可愛い。

頭が痛い。

 

そんな感情を、成人男性、しかも三十路過ぎの強面イケメン俳優(とこの時は思っていた)に抱くとは、ついぞ10分前までは思ってもいなかったのに。

今思えば、これがいけなかった。

ここで、

 

「わあっ錦戸さんってこんなに可愛い人だったのね!?しかも、グループみんな仲が良くて素晴らしい!関ジャニ∞ってどんなグループなのかな?🥺🥺🥺」

 

なんて思ったのがいけなかった。

 

それはそれは深い谷底へと誘う悪魔の囁きだとも知らず、いたいけな大河オタは、未知の領域へと足を踏み入れて行ったのだった。

 

 

 

 

その次は、英会話伝言ゲームを見た。

 

かの有名な、「パスポート取りたいんです回」だ。

あれを見て笑わない人間が、果たしてこの世に存在するのだろうか。

それくらい笑った。

人生で息が出来なくなるほど笑ったランキングの、かなり上位に食い込むハズだ。

 

しかし惜しまれるのは、深夜、寝る前に布団の中で見てしまったこと。

思いっきり大笑いすることも出来ず、かと言って笑いを堪えることも出来ず、ただ必死に笑い声を抑えて布団の中で蹲る様は、さながら噴火前の火山の如し。

 

迫り上がるマグマに耐えながら動画を見終わった頃には、私はすっかり横山さんと村上さんの虜になっていた。

 

今思えば、「外国人の喋る英文を聞き取って後ろの人に伝える」というたったそれだけの企画で、ファンでもない人間をここまで笑わせるなんて(単に私の笑いのツボが浅いという指摘には目を瞑るものとする)、恐ろしい人たちだ。

 

錦戸亮さんの沼に落ち、続いてヨコヒナの沼に浸かるまで、じつに1週間とかからなかった。

我ながらチョロい。

チョロ過ぎる。

 

 

 

その次に見たのは、「ビースト!!」だった。

 

正確に言うと、「初めて意識的に聞いた関ジャニ∞の楽曲」が、「ビースト!!」だった。

 

無責任ヒーロー」や「がむしゃら行進曲」、「ズッコケ男道」なんかは、ファンになる前からよく聞いたことがあった。

 

逆に言えば、その3曲しか知らなかった。

よくもまぁそんな浅学なことでジャニ界隈に入門したな…と今なら思うが、かえって良かったのかもしれない。

この後、数々の爆イケ曲、もとい名曲を知る楽しみが大きかったのだから。

 

さて、ビーストの話に戻る。

 

「錦戸さんは、ライブでふんどし姿になったこともあるんですよ〜!」

 

そんなことを、心優しい(或いは沼に突き落とそうと目論む)先輩eighterさんが教えてくれて、私は「ふむ。」と思った。

 

…いいのかな?

嫁入り前の小娘が、他人(アイドル)とは言え男性のふんどし姿を見るなんて。

あ、大河ドラマのふんどしはいいんです。物語の構成上、必要なので。

でも、「ふんどし姿が見たい🥺💓」なんてふしだらなこと考えるのは、やっぱりいけないんじゃないだろうか………

 

 

そう思ったときには、既に「ビースト!!   関ジャニ∞」で検索していたし、私の人差し指さんは動画再生ボタンをタップしていた。

欲望って恐ろしいな………と他人事のように思った。

 

 

正直このときは、亮ちゃんと村上さんのことしか見ていなかった。

というのも、関ジャニ∞を好きになる前、私は丸山隆平さんを認識していたかどうかすら怪しく、好きになって直後も、何なら一番興味がなかったからだ。

後々、この丸山隆平さんに大いに狂わされることとも知らず、私の初ビーストは終了した。

 

ビーストのふんどし姿が鼻血ものであることは敢えて特記せずともeighterの皆さんには通じることと思うので、ここでは省略する。

 

注目すべきは、私はここで「関ジャニ∞のふんどし姿」よりも、「楽曲」に強く惹かれた、ということだ。

 

検索した動画では、既にふんどし姿になったサビ部分のみが流れていたのだが、このサビがあまりに好みで、3人のサービスシーンそっちのけで釘付けになってしまった。

 

フルで聞いてみると、私の性癖をどストライクにぶち抜くイントロから始まり、「こんなイケメン3人で歌う曲じゃなくね?」と思うほど、どこか情けなくて愛おしい歌詞。

しかし、その抜けた雰囲気がかえってリアルな男らしさを醸し出していて、ビースト中毒に陥ってしまった。

もう、しばらくビーストしか聞けなかった。恐ろしい。

 

この曲がきっかけで、ルックスや面白さだけでなく、関ジャニ∞の楽曲にも興味を持つようになった。

 

 

 

 

そして私を関ジャニ∞箱推しにまで一気に押し上げたのは、「十祭」のライブDVDだ。

 

同級生でジャニーズWESTファンの子に、

 

「私、ちょっと前から関ジャニばっかり見てて、もう毎日それしか考えられないんだけど……これってもうファンなのかな?」

 

と相談すると、

 

「自分はeighterって訳じゃないけど、十祭のDVD持ってるよ!貸してあげようか?」

 

と言ってくれた。

返す返す、その子には頭が上がらないな……と思う。

あのタイミングで十祭を見たことは、後々のオタ活にも大きな影響を与えてくれた。

 

 

そして借りた十祭。

私はアイドルのライブDVDを見ることすら初めましてだったので、心得も作法もよく分からず、その日の夜9時くらいに何となく再生し始めた。しかも次の日には小テストが控えていて、1時間ほど勉強してから寝ようと思っていた夜だ。

無謀すぎる。

今なら分かる。

ライブDVDなんて、1度見始めたらもう終わるまで見てしまうのに。

 

それなのに私ときたら、

 

「まあ、1曲くらい見たら勉強するか」

 

なんて馬鹿なことを考えていた。

 

DVDをセットした。

再生。

 

ぶわりと広がってゆくエイトコール。

 

オープニング映像が映し出される。

 

悲鳴が上がる。

 

 

ここで、丸山さんの

 

「十祭へようこそ!!!」

 

という声。

おおい、ちょっと待った。

丸山さんってこんなにいい声してたんだ。

 

なんて冷静でいられたのは一瞬で、すばるくんの美声が響き渡るのを聞き入っていたら、あっという間に一曲目は終わっていた。

 

というか、何なら四曲くらい終わっていた。

 

気がついたらキングオブ男が始まっていた。

 

私は慌てて動画停止ボタンを押した。

そして呆然としたままDVDを取り出し、自分の部屋に上がり、静かに英語構文テキストを開いた。

 

 

泣いた。

 

あんまりだと思った。

誰か教えてよ。

ライブDVDは見始めたが最後、終わるまで目を離したらいけない、って。

カッコよすぎるので、最後まで止まれないよ、って。

 

かっぱえびせんをはじめて食べる人が、袋を開けながら「1つだけ食べよっかな」なんて言っていたら、

 

「やめろ!ひとつだけしか食べないつもりなら、最初から食べない方がいい!!!」

 

って言うでしょ?

 

あの時の私は、まさにかっぱえびせんを一つだけ食べようとしていたかっぱえびせん初心者。

 

無謀すぎる。

 

ここまで関ジャニ∞さんのことしか考えられない頭にしておいて、英語の構文なんて覚えられるわけがない。

 

え?ought to?オークラ?

 

ええいやめろやめろ、私の学習の邪魔をするな!

 

なんて悲痛な叫びは届くはずもなく、次の日の小テストが散々だったことは言うまでもない。

 

 

日を改めて見た十祭は、本当に衝撃的で魅力的で犯罪級で、とてもここでは語り切れない。

…ので、そのうち言葉に出来たらなと思う。

 

ひとつ言えることは、もし初心者の方に関ジャニ∞でオススメのライブDVDを聞かれたら、間違いなく十祭を差し出すということだ。

そして箱推しになればいい。

箱推しになって日々溢れ出る愛情の行き場に困って暴走すればいい。

 

なんつって。

 

十祭で箱推しにぶち上げられた私は、その後徐々にまるちゃんに惹かれてゆき、決定的な担当確信の瞬間を迎えるまで、気ままな虹色ライフを送ることになるのだった。

 

 

そんな訳で、特に需要のない、私が関ジャニ∞さんに沼ったきっかけでした。

 

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