二歳が生まれるもっと前から

 

すばるくんになりたかった。

なんて言うと変な目で見られるかもしれない。でも結構本気で思ってたし、今も思ってる。

すばるくんが活動再開してから、コンサートに行く機会は何度かあった。でもすばるくんの歌を聞いて自分がどんな気持ちになるのか想像できなくて、気持ちが向かなかった。正直なところ、これから先すばるくんのコンサートに行くことはきっとないんだと諦めていた。それに、コンサートの席が限られているんだから、そこにはすばるくんのことを一番好きな人が行くべきだと思ってた。だから行けなかった。

でも夏の18祭に参戦してから、なんとなく現場に対する気持ちが変わって、ああ、今ならすばるくんや亮ちゃんのコンサートにも行けるかもしれない、と思った。ちょうどそれくらいの時期に、すばるくんが広島に来ると知った。だから二歳のチケットを買ったのは本当に気まぐれだったし、幸運な偶然だった。

当日、1つずつ間隔があけられた1階席を最後列から見ながら、ああ、私はやっぱりすばるくんになりたかったんだな、と思った。

私はすばるくんの音楽のファンではないけど、彼がずっと憧れで、私とは全然違う人で、絶対になれないからこそなりたい人で、ずっと会いたいと思ってた。会えないと思ってた。会えなくしてたのは他でもない私なんだけど、それでももう会えないと思っていた。なんだ、会おうと思えば会えたのか、と今さら気づいた。

すばるくんがいなくなってから、何もかも変わってしまったと思っていたけど、別に世界が滅亡したわけじゃないし。すばるくんが生きてて、亮ちゃんが生きてて、エイトは今もアイドルをやってて、私はそれを見ている。あの時は確かに絶望したけど、不幸ではなかった。それはあの時も今も変わらない。

私は多分、すばるくんの歌をそこまで熱心には好きでない。それでも世界にはすばるくんの歌が必要だと心底思っている。もっと言うと、この世界にはすばるくんの歌声が必要だと思っている。それで救われる私みたいなのがいるし、もっと強烈にすばるくんに救われた人がいるから。

だからぜひすばるくんには、喉が擦り切れて歌えなくなるまで歌っていて欲しい。思うままに歌っていて欲しい。アイドルだった頃のすばるくんに間に合わなかった私から、今のすばるくんへのお願いは、「歌っていて欲しい」、ただそれだけだ。